そろばんノート

相続の手続きと期限

兄弟姉妹の相続放棄

順位が兄弟姉妹まで回る仕組みと、追加で要る戸籍。

亡くなった人の子が全員相続放棄をし、父母や祖父母もいないか全員放棄すると、相続の権利は第3順位の兄弟姉妹に移ります(民法889条1項2号)。借金のある相続では、子の放棄によっておじ・おばにあたる人が相続人になる、という形でこの移動が起きます。

兄弟姉妹の熟慮期間3か月は、被相続人の死亡日からではなく、先の順位の人が全員放棄して自分が相続人になったと知った時から数えます。兄弟姉妹が放棄の申述をするときは、子や配偶者の申述より多くの戸籍を添付します。

順位が移る順番

相続人の順位は、第1順位が子、第2順位が直系尊属、第3順位が兄弟姉妹です(民法887条・889条)。先の順位に一人でも相続する人がいれば、次の順位には回りません。配偶者はどの順位とも並んで相続人になり、配偶者が放棄しても順位の移動には影響しません。

例として、Aさんが借金を残して2027年3月1日に亡くなったとします。Aさんの子2人が4月に放棄し、Aさんの母も5月に放棄しました。父はすでに亡くなっていたので、ここでAさんの兄と妹が相続人になります。

兄弟姉妹の熟慮期間はいつ始まるか

民法915条の「自己のために相続の開始があったことを知った時」は、兄弟姉妹にとっては、先順位の全員の放棄によって自分に権利が回ってきたと知った時を指します。上の例で兄が6月10日にそのことを知れば、そこから3か月が兄の期限です。

先順位の人が放棄したことを後順位の人へ知らせる義務は、法律上ありません。このため、兄弟姉妹は債権者からの通知や督促で初めて自分が相続人になったと知ることもあります。その場合は通知を受けて知った日が起点になります。

兄弟姉妹が申述できるのは、自分が相続人になった後です。先順位の放棄が受理されたかどうかは、放棄した本人から受理通知書の写しを受け取るか、利害関係人として家庭裁判所に照会する方法で確認できます。

兄弟姉妹の申述に追加で要る戸籍

兄弟姉妹が申述するときは、共通の書類(申述書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本)に加えて、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を添えます。これにより、被相続人に子がいないこと、または子の全員が分かることを示します。

さらに、被相続人の子で先に亡くなった人がいればその人の出生から死亡までの戸籍、被相続人の父母や祖父母が亡くなっていることが分かる戸籍も必要です。先順位の人が放棄した場合は、それを示す受理証明書などの提出を求める裁判所もあります。

戸籍の通数が多くなりやすく、改製原戸籍や除籍は1通750円です(政令で定める標準額で、実際の額は市区町村の条例によります)。被相続人の戸籍は兄弟姉妹の立場では広域交付で取れないため、本籍地の市区町村へ請求します。詳しくは戸籍の集め方にあります。

兄弟姉妹が先に亡くなっているとき:甥・姪

兄弟姉妹のうち被相続人より先に亡くなった人がいれば、その子である甥・姪が代わりに相続人になります(民法889条2項による代襲相続)。兄弟姉妹の系統では代襲は甥・姪までで、甥・姪の子が再代襲することはありません。

甥・姪が放棄の申述をするときは、兄弟姉妹の場合の書類に加えて、亡くなった親(被相続人の兄弟姉妹)の死亡の記載がある戸籍を添えます。甥・姪の熟慮期間も、自分が相続人になったと知った時から数えます。

全員が放棄したあとの財産

兄弟姉妹と甥・姪まで全員が放棄すると、相続人がいない状態になり、相続財産は法人になります(民法951条)。利害関係人や検察官の請求により、家庭裁判所が相続財産清算人を選びます(民法952条)。

清算人は債権者への支払いなどを行い、残った財産は特別縁故者への分与を経て国庫に帰属します。放棄した人のうち財産を現に占有している人は、清算人に引き渡すまで保存の義務を負います(民法940条)。

よくある質問

兄弟姉妹が放棄すると、その子(甥・姪)に権利が移りますか。
移りません。放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされ、放棄は代襲の原因にもなりません。代襲が起きるのは、兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていた場合などに限られます。
半分だけ血がつながった兄弟姉妹も相続人になりますか。
なります。父母の一方だけが同じ兄弟姉妹も第3順位の相続人で、法定相続分は父母の両方が同じ兄弟姉妹の2分の1です(民法900条4号)。放棄の申述も同じ手続きで行います。
先順位の人と同時に申述できますか。
兄弟姉妹は、子や直系尊属が全員放棄して初めて相続人になります。申述の時点で相続人になっているかを家庭裁判所が確認するため、受付の扱いは申述先の家庭裁判所に確認することになります。

このページは、法律と公的機関の案内にもとづく一般的な説明と計算の目安です。あなたの場合にどうするかの判断は、司法書士・税理士・弁護士、または法務局・税務署・家庭裁判所の相談窓口にご確認ください(司法書士法、税理士法、弁護士法72条)。

出典

最終確認日 2026年10月15日。法律の条文は e-Gov 法令検索、手続きは各機関のページで確かめています。