相続の手続きは、亡くなった日を起点に期限が決まっています。最初が7日以内の死亡届(戸籍法86条)、次が14日以内の健康保険や世帯主の届出、3か月以内の相続放棄(民法915条)、4か月以内の準確定申告、10か月以内の相続税の申告、そして3年以内の相続登記(不動産登記法76条の2)です。
このページでは、それぞれの手続きを時間の順に追い、途中で必要になる「誰が相続人か」「どの割合で分けるか」「どの書類をそろえるか」を説明します。死亡日を入れて具体的な日付を出すときは期限の計算ページを使えます。
7日以内と14日以内:役所と年金の届出
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村へ出します。国外で亡くなったときは3か月以内です。死亡届の期間は死亡の事実を知った日を1日目として数えるので(戸籍法43条)、2026年10月15日に亡くなりその日に知ったなら10月21日が最終日になります。
14日以内には、後期高齢者医療・介護保険の資格喪失届と、世帯主が亡くなったときの世帯主変更届(住民基本台帳法25条)が続きます。国民健康保険の資格喪失は法令に死亡時の届出期限がなく、多くの市区町村が14日以内と案内しています。年金を受けていた人の死亡届は国民年金が14日、厚生年金が10日以内ですが、日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は原則として省略できます。葬祭費や埋葬料など、健康保険から出るお金は社会保険の給付のページで扱っています。
期限の一覧
| 手続き | 期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 7日 | 戸籍法86条・43条 |
| 年金受給権者死亡届(厚生年金) | 10日 | 日本年金機構の案内(厚生年金は10日以内) |
| 年金受給権者死亡届(国民年金) | 14日 | 日本年金機構の案内(国民年金は14日以内) |
| 国民健康保険の資格喪失届 | 14日 | 市区町村の案内(14日以内) |
| 後期高齢者医療の資格喪失届 | 14日 | 高齢者の医療の確保に関する法律施行規則26条 |
| 介護保険の資格喪失届 | 14日 | 介護保険法施行規則32条 |
| 世帯主の変更届 | 14日 | 住民基本台帳法25条 |
| 相続放棄・限定承認の申述(熟慮期間) | 3か月 | 民法915条 |
| 準確定申告 | 4か月 | 所得税法124条・125条 |
| 相続税の申告と納付 | 10か月 | 相続税法27条・33条 |
| 遺留分侵害額請求(知った時から) | 1年 | 民法1048条 |
| 遺留分侵害額請求(相続開始から) | 10年 | 民法1048条 |
| 相続登記の申請 | 3年 | 不動産登記法76条の2 |
| 生命保険金の請求(時効) | 3年 | 保険法95条 |
| 埋葬料・葬祭費の請求(時効) | 2年 | 健康保険法193条・国民健康保険法110条 |
| 高額療養費の請求(時効) | 2年 | 健康保険法193条 |
| 遺族年金の請求(時効) | 5年 | 国民年金法102条・厚生年金保険法92条 |
3か月以内:相続するか放棄するかを決める
借金のほうが多いときなどは、家庭裁判所に申述して相続放棄ができます。期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」で、この期間を熟慮期間と呼びます(民法915条)。財産の調査が間に合わないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます。
放棄をした人は初めから相続人でなかったものとみなされ(民法939条)、相続権は次の順位へ移ります。手続きの流れと費用は相続放棄のページ、子が全員放棄して兄弟姉妹に順番が回る場面は兄弟姉妹の相続放棄で説明しています。放棄の前に遺産を売るなどの処分をすると単純承認とみなされ(民法921条)、放棄ができなくなります。
4か月と10か月:税金の申告
亡くなった人にその年の所得があれば、相続人が代わりに準確定申告をします。期限は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です(所得税法124条・125条)。提出先や医療費控除の扱いは準確定申告のページにまとめています。
遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると、10か月以内に相続税の申告と納付が要ります(相続税法27条)。法定相続人が3人なら基礎控除は4,800万円です。人数の数え方は基礎控除のページ、税額の目安は相続税シミュレーターで計算できます。
誰が相続人になり、どう分けるか
亡くなって財産を残した人を被相続人といいます。その配偶者はいつも相続人で、ほかに子、子がいなければ父母などの直系尊属、それもいなければ兄弟姉妹が加わります(民法887条・889条・890条)。順位の細かい扱いは相続人の範囲と順位、子や兄弟姉妹が先に亡くなっていて孫や甥姪が引き継ぐ場合は代襲相続のページで扱います。
分ける割合の基準は民法900条の法定相続分で、配偶者と子なら2分の1ずつです。人数と続柄を入れて割合と金額を出す法定相続分の計算では、遺言があっても一定の相続人に残る遺留分も同時に表示します。遺言書の種類や家庭裁判所の検認の要否は遺言のページにあります。
戸籍をそろえ、分け方を書面にする
銀行や法務局の手続きでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が求められます。2024年3月1日からは広域交付により、本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できるようになりました。請求できる人と手数料は戸籍の集め方で説明しています。
戸籍の束を窓口ごとに出す代わりに、法務局の認証を受けた法定相続情報一覧図の写しを使えます。制度の概要は法定相続情報一覧図、申出に添える書類は一覧図の必要書類、図そのものは一覧図メーカーで作れます。相続人全員で分け方を決めたら、遺産分割協議書に全員が実印を押し、印鑑証明書を添えます。
3年以内:相続登記
不動産を相続で取得した人は、そのことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の2、2024年4月1日施行)。施行日より前に開始した相続も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
申請のときに戸籍の原本を返してもらうには、相続関係説明図を添えます。申請書の書き方と、固定資産税評価額の0.4%で計算する登録免許税は相続登記のページで説明しています。
贈与税
相続税
よくある質問
- 期限を過ぎてしまった手続きはどうなりますか。
- 結果は手続きごとに違います。熟慮期間の3か月を過ぎると単純承認したものとみなされ(民法921条2号)、借金も含めて引き継ぎます。相続税は期限後申告ができますが、延滞税や無申告加算税がかかることがあります。死亡届の遅れは戸籍法137条により5万円以下の過料の対象です。
- 相続税がかからない見込みでも、10か月の期限は関係しますか。
- 遺産が基礎控除以下なら申告は要りません。一方、配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)を使えば税額がゼロになるという場合は、申告をしないと軽減を受けられません。軽減の上限は、1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い額です。
- 葬儀費用や当面の生活費を、遺産分割の前に預金から出せますか。
- 預貯金の払戻し制度(民法909条の2)で、相続人が単独で払い戻しを受けられます。金額は預貯金額×3分の1×その人の法定相続分で、1つの金融機関につき150万円が上限です。
出典
最終確認日 2026年10月15日。法律の条文は e-Gov 法令検索、手続きは各機関のページで確かめています。