被相続人とは、亡くなって財産(借金も含みます)を残し、その財産が相続される人のことです。財産を受け継ぐ側は相続人と呼びます。父が亡くなり母と長男が受け継ぐなら、被相続人は父、相続人は母と長男です。
被相続人という言葉は、相続放棄の申述書、登記の申請書、遺産分割協議書、相続税の申告書など、相続のほとんどの書類に出てきます。書類ごとに、被相続人の戸籍・最後の住所・最後の本籍のどれを書き、どの証明書を添えるかが決まっています。
似た言葉との違い
「推定相続人」は、まだ生きている人について、今亡くなったら相続人になるはずの人を指します。廃除(民法892条)の対象になるのは推定相続人です。「受遺者」は遺言で財産を受け取る人で、相続人でない人もなれます。
「故人」は日常の言い方で、法律や書類で使う言い方が被相続人です。相続税の申告書第1表にも、被相続人の氏名、生年月日、住所を書く欄があります。
被相続人が残すのは財産だけではない
相続の対象は預金や不動産に限りません。借入金、未払いの税金や医療費、連帯保証の債務も含めて、被相続人の権利義務を相続人が引き継ぎます(民法896条)。借金が多いときに3か月以内の相続放棄が意味を持つのはこのためです。
一方、被相続人の一身に専属したものは相続されません(民法896条ただし書)。年金を受ける権利そのものがその例で、まだ受け取っていなかった未支給年金は、生計を同じくしていた遺族が自分の権利として請求します。
被相続人の戸籍が必要になる理由
相続人が誰かを銀行や法務局に示すには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が要ります。婚姻や転籍で本籍が変わるたびに戸籍が分かれ、法改正で作り直される前の改製原戸籍もあるため、1人分で数通以上になることがよくあります。
手数料は戸籍謄本1通450円、除籍謄本と改製原戸籍は1通750円です(政令で定める標準額で、実際の額は市区町村の条例によります)。2024年3月1日からの広域交付を使うと、配偶者や子は最寄りの市区町村窓口で、ほかの市区町村にある被相続人の戸籍もまとめて請求できます。手順は戸籍の集め方にあります。
被相続人の最後の住所が使われる手続き
相続放棄の申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。申述書には、被相続人の住民票の除票または戸籍の附票を添えます。準確定申告や相続税の申告書も、被相続人の住所地の税務署へ出します。
相続登記では、登記簿に載った所有者と被相続人が同じ人だと示すため、登記簿上の住所と最後の住所をつなぐ住民票の除票や戸籍の附票を出します。転居が多く登記簿の住所までたどれないときに何を添えるかは、申請先の法務局が判断します。
法定相続情報一覧図での書き方
法定相続情報一覧図には、被相続人の氏名、生年月日、死亡日、最後の住所、最後の本籍を書きます。最後の住所を証明するため、住民票の除票を申出書に添えます(取れないときは戸籍の附票)。
申出先の登記所は、被相続人の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地から選べます。添付書類の一覧は一覧図の必要書類にまとめています。
よくある質問
- 被相続人と相続人が同時に亡くなったらどうなりますか。
- 事故などでどちらが先に亡くなったか分からないときは、同時に死亡したものと推定され(民法32条の2)、互いに相続しません。父と長男が同時に亡くなった場合、長男は父を相続しませんが、長男の子が代襲相続人として父を相続します。
- 被相続人の本籍が分かりません。
- 最後の住所地の市区町村で、本籍の記載を入れた住民票の除票を請求すると分かります。本籍が分かれば、広域交付でその戸籍を請求できます。
- 遺産分割協議書には被相続人をどう書きますか。
- 冒頭に被相続人の氏名、死亡日、最後の本籍と最後の住所を書き、誰の遺産についての協議かを特定します。記載例は遺産分割協議書のページにあります。
出典
最終確認日 2026年10月15日。法律の条文は e-Gov 法令検索、手続きは各機関のページで確かめています。