そろばんノート

相続の手続きと期限

夫婦間の居住用不動産の贈与(配偶者控除)

おしどり贈与の要件と、相続で受け取る場合との違いを並べます。

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用の土地や建物、またはそれを取得するための金銭を贈与したときは、最高2,000万円の配偶者控除を受けられます。基礎控除110万円と合わせると、2,110万円まで贈与税がかかりません(相続税法21条の6、国税庁 No.4452)。この特例は「おしどり贈与」とも呼ばれます。

同じ配偶者からの贈与では一生に一度しか使えず、贈与税が0円になる場合でも申告書の提出が要件です。贈与者が後で亡くなっても、控除を受けた部分は生前贈与加算の対象になりません。

婚姻期間20年の数え方

婚姻期間は、婚姻の届出をした日から贈与の日までの期間で数えます。内縁の期間は含まれません。1年未満の端数は切り捨てるため、19年11か月では要件を満たしません。

例えば2007年4月1日に婚姻届を出した夫婦なら、2027年4月1日以後の贈与で20年になります。途中で離婚して同じ相手と再婚した場合は、前後の婚姻期間を通算します。届出日は戸籍謄本で確認できます(戸籍の集め方)。

対象になる財産と住む要件

対象は国内の居住用不動産そのものか、それを買うための金銭です。贈与を受けた配偶者が、翌年3月15日までにその家に実際に住み、その後も住み続ける見込みであることが条件です。金銭の場合は、同じ期限までにその金銭で居住用不動産を取得している必要があります。

自宅の土地だけ、建物だけ、あるいは持分の一部だけを贈与することもできます。評価は土地が路線価や倍率方式、建物が固定資産税評価額によるため、時価より低い評価額で2,000万円の枠を判定することになります。

申告と添付書類

贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与を受けた配偶者が贈与税の申告書を出します。添付するのは、贈与後10日を経過した日以後に作られた戸籍謄本または抄本、戸籍の附票の写し、居住用不動産の登記事項証明書などです。

金銭の贈与を受けて家を買った場合は、取得した不動産の登記事項証明書で取得を示します。申告がなければ配偶者控除は使えず、2,000万円を超える贈与には一般税率で贈与税がかかります。夫婦間の贈与は特例税率の対象ではありません。

贈与にかかる税と費用

贈与税が0円でも、不動産の名義を移す登記には登録免許税がかかり、税率は固定資産税評価額の2%です。相続で取得した場合の0.4%と比べると5倍になります。評価額2,000万円の自宅なら、贈与では40万円、相続では8万円です。

贈与では不動産取得税もかかります。相続による取得には不動産取得税がかからないため、名義を移すのに要する費用は、贈与の方が相続より多くなるのが普通です。登記の手続きそのものは司法書士に依頼する例が多く、報酬は事務所ごとに異なります。

相続で受け取る場合との比較

配偶者が相続で財産を取得するときは、1億6,000万円か法定相続分相当額のどちらか多い額まで税額がかかりません(配偶者の税額軽減)。遺産の総額がこの範囲に収まる家庭では、配偶者の取得分に相続税がかからないため、おしどり贈与によって配偶者自身の税額が下がる場面は限られます。

一方で、2,000万円の控除部分は相続開始前7年以内でも持ち戻されないため、その分だけ亡くなった人の遺産が減り、子が負担する相続税の計算にも影響します。どちらの影響が大きいかは、遺産の額と相続人の構成によって変わり、相続税シミュレーターで贈与前と贈与後の遺産額を入れると税額の差を見られます。

よくある質問

2,000万円を使い切らなかった残りは翌年に使えますか。
使えません。配偶者控除は同じ配偶者からの贈与について一生に一度だけで、1,500万円の贈与で適用を受けたら、残りの500万円を別の年に繰り越すことはできません。
贈与後に住まずに売った場合はどうなりますか。
翌年3月15日までに住み、その後も住み続ける見込みであることが要件なので、住まずに売れば配偶者控除は受けられません。売却した場合の譲渡所得の計算は、贈与を受けた配偶者の所得税の問題として別に扱われます。
遺産分割では、この贈与はどう扱われますか。
民法では、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を遺贈や贈与した場合、持ち戻し免除の意思表示があったと推定されます(民法903条4項)。遺産分割で配偶者の取り分を計算するときに、贈与した家を差し引かない扱いが原則になります。

このページは、法律と公的機関の案内にもとづく一般的な説明と計算の目安です。あなたの場合にどうするかの判断は、司法書士・税理士・弁護士、または法務局・税務署・家庭裁判所の相談窓口にご確認ください(司法書士法、税理士法、弁護士法72条)。

出典

最終確認日 2026年10月15日。法律の条文は e-Gov 法令検索、手続きは各機関のページで確かめています。