相続税の2割加算は、相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人の配偶者でも一親等の血族(子と父母)でもない場合に、その人の相続税額にその20%を加える仕組みです(相続税法18条、国税庁 No.4157)。兄弟姉妹、甥や姪、祖父母、孫、相続人でない第三者が対象になります。
加算は相続税の総額を各人に按分した後、その人の分だけに掛かります。例えば相続税の総額のうち兄の負担分が200万円なら、2割の40万円を加えて240万円を納めることになります。他の相続人の税額は変わりません。
対象になる人とならない人
対象外なのは、配偶者、子、父母です。子には養子も含まれ、普通養子でも特別養子でも一親等の血族として扱われます。孫は二親等なので原則として加算の対象ですが、子が先に亡くなって孫が代襲相続した場合は、子の地位を引き継ぐため加算されません。
被相続人が孫を養子にしていた場合、その孫養子は法律上は子ですが、相続税では2割加算の対象になります。ただし孫養子が同時に代襲相続人でもある場合は、対象から外れます。祖父母は二親等の直系尊属で、父母が先に亡くなり祖父母が相続人になると加算の対象です。
兄弟姉妹は二親等、甥姪は三親等の傍系血族なので、相続人として取得しても加算されます。相続人の順位は相続人は誰になるかで確認できます。
兄弟姉妹が相続人になる計算例
Aさんに配偶者も子もなく、父母も既に亡くなっていて、相続人が兄と妹の2人だったとします。遺産は6,200万円で、基礎控除は3,000万円+600万円×2人の4,200万円です。課税遺産総額は2,000万円になり、法定相続分の2分の1ずつ1,000万円に10%を掛けると各100万円、相続税の総額は200万円です。
兄と妹が2分の1ずつ取得すれば、それぞれの按分額は100万円です。2人とも兄弟姉妹なので2割加算され、各120万円、合計240万円を納めます。2割加算がなければ200万円で済む計算なので、兄弟姉妹の相続では総額そのものが40万円増えることになります。数字を変えた計算は相続税シミュレーターで確かめられます。
孫が財産を受け取る場面
孫が遺言で財産を受け取った場合や、死亡保険金の受取人になっていた場合は、遺贈や、みなし遺贈で取得した人として2割加算の対象です。祖父が孫を受取人にした生命保険金は、孫が相続人でなければ非課税枠も使えないため、保険金の全額が課税価格に入り、その税額に20%が加わります。
教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与で、贈与者が亡くなったときの残額を孫が取得したとみなされる場合も、その部分の税額は加算されます(教育資金の一括贈与)。生前贈与加算で持ち戻された孫への贈与についても、孫が遺贈などで財産を取得していれば同じ扱いです。
加算と税額控除の順番
計算は、按分した算出税額に20%を加え、そこから贈与税額控除、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除などを差し引く順で進みます。未成年者控除は18歳になるまでの年数×10万円で(国税庁 No.4164)、孫が未成年であれば加算後の税額から差し引かれます。
相続税の申告書では、2割加算の対象者と金額を第4表で計算し、第1表に転記します。配偶者の税額軽減は配偶者にしか使えないため、兄弟姉妹や孫の税額を軽減で消すことはできません。
よくある質問
- 父母が相続人になった場合も2割加算されますか。
- されません。父母は一親等の血族なので、子がいない人の相続で父母が相続人になっても、税額は1.2倍になりません。祖父母が相続人になったときは二親等なので加算されます。
- 甥や姪が代襲相続人になった場合も加算されますか。
- 加算されます。孫の代襲相続と違い、兄弟姉妹の代わりに相続する甥や姪は三親等の血族で、一親等の血族ではないためです。親である兄弟姉妹が生きていても亡くなっていても、甥や姪が取得した分は1.2倍になります。
- 子の配偶者が遺言で財産を受けたら対象ですか。
- 対象です。子の配偶者(嫁や婿)は一親等の姻族で、血族ではありません。被相続人と養子縁組をしていれば子として扱われ、その場合は加算されません。
出典
最終確認日 2026年10月15日。法律の条文は e-Gov 法令検索、手続きは各機関のページで確かめています。