そろばんノート

相続の手続きと期限

遺言書の種類と検認

遺言の種類ごとに、見つけた後の手続きが変わります。

普通方式の遺言には、自筆証書遺言(民法968条)、公正証書遺言(969条)、秘密証書遺言(970条)の3種類があります。自筆証書遺言と秘密証書遺言は、遺言者が亡くなった後に家庭裁判所の検認を受けます(1004条)。公正証書遺言と、法務局の保管制度に預けた自筆証書遺言は検認が要りません。

自宅で封筒に入った遺言書を見つけたときは、開けずに家庭裁判所へ持って行きます。封印のある遺言書を家庭裁判所の外で開封すると、5万円以下の過料の対象です(1004条3項、1005条)。

自筆証書遺言の要件

自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、氏名を自分で書き、印を押して作ります(民法968条1項)。日付は「2027年4月吉日」のような書き方では特定できず、無効とされた裁判例があります。ワープロで本文を作ったものや、録音・録画による遺言は自筆証書遺言として認められません。

2019年1月13日からは、遺言に添える財産目録に限ってパソコンで作ったものや通帳のコピー、登記事項証明書を使えるようになりました。その場合、目録の各ページに遺言者が署名し、押印します(968条2項)。

公正証書遺言と秘密証書遺言

公正証書遺言は、公証役場で証人2人の立会いのもと、遺言者の口述を公証人が書面にする方式です。原本は公証役場に保管され、紛失や改ざんの心配が少なく、検認もありません。公証人の手数料は遺言で扱う財産の額に応じて決まります。

秘密証書遺言は、遺言者が署名押印して封印した遺言書を公証人と証人2人の前に提出し、自分の遺言書であることを申述する方式です(970条)。内容は秘密にできますが、公証役場は封紙に記録するだけで原本は預からず、検認も必要です。

法務局の自筆証書遺言書保管制度

2020年7月10日から、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)に預けられるようになりました。遺言者本人が出向いて申請し、手数料は1件3,900円です。用紙の大きさや余白など、保管制度で決められた様式があります(法務省 自筆証書遺言書保管制度)。

保管された遺言書は検認が不要です。遺言者が亡くなった後、相続人は法務局で遺言書情報証明書の交付を請求し、それを使って相続登記や預金の手続きを進めます。相続人の一人が証明書を受け取ると、他の相続人にも遺言書が保管されていることが通知されます。

検認の手続き

検認は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てます。申立書に遺言者の出生から死亡までの戸籍と相続人全員の戸籍を添え、遺言書1通につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手を納めます(裁判所 遺言書の検認)。

裁判所から検認期日の通知が相続人に届き、期日には申立人が遺言書を持参します。出席しなかった相続人がいても検認は行われます。検認が済むと、遺言書に検認済証明書が付けられ、登記や銀行の手続きに使えるようになります。

検認は遺言書の形状や日付、署名などをその時点で記録し、後の偽造や変造を防ぐ手続きです。遺言が有効か無効かを判断するものではありません。有効性に争いがあるときは、別に調停や訴訟で扱います。

見つけたときにしてはいけないこと

封印のある遺言書を開けること、遺言書を書き換えること、隠したり捨てたりすることは避けます。遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した相続人は相続欠格となり、相続人の資格を失います(民法891条5号)。

検認を経ないで遺言を執行した場合も、5万円以下の過料の対象です(1005条)。複数の遺言書が見つかったときは、日付の新しいものが前の遺言と抵触する部分について優先します(1023条)。どの遺言書も、種類に応じた手続きを済ませてから内容を比べます。

遺言と遺留分の関係

遺言で特定の相続人や第三者に財産を集中させても、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があります(民法1042条)。たとえば配偶者と子1人が相続人なら、遺留分はそれぞれ4分の1です。

遺留分を侵害された人は、相続の開始と侵害を知った時から1年、相続開始から10年以内に遺留分侵害額請求ができます(1048条)。詳しくは遺留分の計算で説明しています。

改正が予定されている点

2026年6月に成立した民法などの改正(令和8年法律第45号)で、自筆証書遺言の押印を不要にすることや、法務局で作成する新しい方式の遺言の創設が予定されています。施行日は政令で決まり、このページの説明は2026年10月時点で施行されている制度にもとづいています。作成や保管の手続きをするときは、法務省の案内で施行の状況を確かめてください。

よくある質問

公正証書遺言があるかどうかを調べる方法はありますか。
1989年以降に作られた公正証書遺言は、全国の公証役場で遺言検索システムを使って照会できます。相続人が戸籍や本人確認書類を持って公証役場に請求します。
封筒に封がされていない遺言書も検認が要りますか。
要ります。検認の要否は封印の有無ではなく遺言の種類で決まり、自筆証書遺言は法務局保管のものを除いて検認を受けます。封のない遺言書は中身を読めますが、手を加えずに保管します。
検認にはどのくらいの期間がかかりますか。
申立てから検認期日まで、1か月から2か月ほどかかる家庭裁判所が多くあります。相続放棄の3か月や相続税の10か月の期限と重なるため、申立ては早い時期に行う相続人が多いです。

このページは、法律と公的機関の案内にもとづく一般的な説明と計算の目安です。あなたの場合にどうするかの判断は、司法書士・税理士・弁護士、または法務局・税務署・家庭裁判所の相談窓口にご確認ください(司法書士法、税理士法、弁護士法72条)。

出典

最終確認日 2026年10月15日。法律の条文は e-Gov 法令検索、手続きは各機関のページで確かめています。