退職勧奨を受けても、その場で返事をしたり、退職届や合意書に署名したりする必要はありません。退職は働く人が決めることなので、条件を書面でもらい、持ち帰って考えたいと伝えてかまいません。応じるか断るかを決める前に、離職理由がどう書かれるか、退職金や解決金があるか、退職日はいつかを確かめておきます。
その場でサインしない
退職届は、自分から退職を申し出る書類です。会社に勧められて出した場合でも、文面が「一身上の都合により」となっていると、あとで勧奨による退職だったことを示しにくくなります。
退職の合意書は、退職日や退職金、解決金、離職理由など、合意した条件を書面にしたものです。署名する前に、離職理由が「退職勧奨による」と書かれているか、ほかに不利な条件がないかを読み、わからない点は持ち帰って相談先に見せます。
会社都合になる条件
ハローワークの特定受給資格者の範囲には「事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)」があります。勧奨に応じて辞めた人は特定受給資格者になり、自己都合の給付制限がなく、給付日数も多くなることがあります(会社都合の失業保険)。
離職票-2の離職理由が自己都合になっていた場合は、ハローワークで異議を申し立てられます。勧奨を受けた日や面談の記録、会社からのメールなどが、事実を示す材料になります。会社の側の離職理由の書き方は、会社向けの離職理由の一覧にあります。
退職金と解決金
退職金は、会社の退職金規程で決まります。規程によっては、会社都合の退職のほうが支給率が高く決められていることがあるので、勧奨による退職がどちらに当たるかを確かめます(退職金の早見表)。
解決金や上乗せの退職金に、決まった相場はありません。額は交渉と事案ごとの事情で決まります。参考になる公的な調査として、労働政策研究・研修機構が、労働局のあっせんや労働審判、裁判上の和解で決まった解決金の中央値を公表しています。
| 調査(公表年) | 手続き | 数えた事案 | 解決金の中央値 |
|---|---|---|---|
| 労働政策研究報告書 No.174(2015年) | 労働局のあっせん | 2012年度、4労働局、853件(雇用紛争全体(解雇、雇止め、退職勧奨、労働条件の引下げなど)) | 156,400円(月収の1.1か月分) |
| 労働政策研究報告書 No.174(2015年) | 労働審判 | 2013年、4地方裁判所、452件(雇用紛争全体) | 1,100,000円(月収の4.4か月分) |
| 労働政策研究報告書 No.174(2015年) | 裁判上の和解 | 2013年、4地方裁判所、193件(雇用紛争全体) | 2,301,357円(月収の6.8か月分) |
| 労働政策研究報告書 No.226(2023年) | 労働審判 | 2020年から2021年、1地方裁判所本庁、759件(雇用終了の事案(約7割が解雇)) | 1,500,000円(月収の4.7か月分) |
| 労働政策研究報告書 No.226(2023年) | 裁判上の和解 | 2020年から2021年、1地方裁判所本庁、275件(雇用終了の事案(約7割が解雇)) | 3,000,000円(月収の7.3か月分) |
| 労働政策研究報告書 No.237(2025年) | 労働局のあっせん(解雇型) | 2023年度、4労働局、179件(解雇の事案) | 235,000円(月収の1.03か月分) |
応じない場合と、答え方
断る場合は、「退職するつもりはありません」と、はっきり伝えます。断ったあとも同じ話が繰り返されるときは、面談の日時と内容を記録し、総合労働相談コーナーなどに相談します。
応じるかを考えている場合は、「条件を書面でいただいて検討します」と伝えると、その場で決めずに済みます。退職日、退職金の額、解決金、有給休暇の扱い、離職理由の書き方を、書面で示してもらうよう頼みます。
能力不足や病気を理由にされたとき
能力不足を理由に勧められた場合も、応じるかどうかは自由です。どの点が不足とされたのか、指導や配置の見直しがあったかを書き留めておくと、そのあと解雇の話になったときの材料になります。
仕事が原因のけがや病気で休んでいる間とその後30日間は、労働基準法第19条で解雇が禁止されています。私的な病気の場合は、就業規則の休職制度を使えるかを確かめます。病気を理由に退職を迫られたときは、診断書と会社とのやりとりを残しておきます。
よくある質問
- 退職勧奨に応じたら失業保険はすぐもらえますか?
- 特定受給資格者には自己都合の給付制限がないので、7日間の待期のあとから支給の対象になります。
- 早期退職の募集に応募した場合も会社都合ですか?
- 従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などに応募して辞めた場合は、退職勧奨による離職には当たりません。
出典と前提
最終確認日 2026年10月25日。このページは法律と公的機関の案内による一般的な説明で、個別の事案について判断するものではありません。実際の事案は、都道府県労働局の総合労働相談コーナー(予約不要・無料)、法テラス、弁護士に相談できます。