iDeCoと退職金の受け取り方
iDeCoを一時金で受け取って退職金をあとに受け取るとき、2026年1月1日以後に受け取った一時金は、退職金の年の前年以前9年内なら退職所得控除が調整されます。改正前は4年内でした。退職金を先に受け取る場合は、前年以前19年内のままです。
この内容は2026年10月29日時点のものです。
最終確認日 2026年10月29日
iDeCoを一時金で受け取ると、会社の退職金と同じ退職所得になり、退職所得控除を使えます(所得税法第30条・第31条、iDeCo公式サイト)。ただし退職金と一時金を近い年に受け取ると、勤続期間の重なる部分について控除を2回使えないように、あとから受け取る分の控除が減らされます。
令和7年度の税制改正で、iDeCoの一時金を先に受け取って退職金をあとに受け取る場合の期間が、退職金の年の「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に延びました。2026年1月1日以後に受け取った一時金が対象で、それより前に受け取った一時金は4年内のままです(国税庁 No.2732、財務省 税制改正の大綱)。
| 受け取る順番 | 調整の対象になる期間 | 変わったか |
|---|---|---|
| iDeCoの一時金 → 退職金 | 退職金を受け取る年の前年以前9年内に受け取った一時金(2026年1月1日以後に受け取ったもの) | 4年内から9年内に |
| 退職金 → iDeCoの一時金 | 一時金を受け取る年の前年以前19年内に受け取った退職金 | 変わらない |
| 同じ年に両方 | 勤続期間を合わせて1つの控除で計算 | 変わらない |
控除の減り方
調整の対象になると、あとから受け取る分の控除は、その分の勤続年数で出した控除から、重なっている期間の年数(1年未満は切り捨て)で出した控除の額を引いたものになります。引いた結果が80万円より少ないときは80万円です(国税庁 No.2732)。
iDeCoの一時金の「勤続期間」は、掛金を払っていた加入者の期間です。会社員の間ずっと掛金を払っていた人は、その期間がそのまま会社の勤続期間と重なります。前に受け取った額がその控除より少ないときは、重なりを短く数える決まりもあります。
例1:同じ年に受け取る(2026年)
勤続32年の退職金2,000万円と、加入20年のiDeCoの一時金1,000万円を同じ年に受け取ると、2つを合わせて3,000万円とし、長いほうの勤続32年で控除を1回だけ計算します(国税庁 No.2735)。所得税と住民税は合わせて1,632,082円です。別々の年に受け取り、どちらにも調整がかからない場合の合計422,940円と比べると、1,209,142円多くなります。
| 退職所得控除 | 課税退職所得 | 所得税 | 住民税 | |
|---|---|---|---|---|
| 退職金2,000万円と一時金1,000万円を合わせて(勤続32年) | 1,640万円 | 680万円 | 952,082円 | 680,000円 |
例2:iDeCoが先、6年後に退職金(2026年と2032年)
2026年にiDeCoの一時金を受け取り、2032年に勤続38年で退職する場合です。一時金の加入期間20年は、すべて会社の勤続期間と重なっています。新しい9年のルールでは2026年が対象の期間に入るので、退職金の控除は2,060万円から20年分の800万円を引いた1,260万円になり、2つ合わせた税金は840,112円です。
改正前の4年のルールなら、6年前の一時金は対象にならず、退職金の控除は2,060万円のままで、合計は151,050円でした。同じ受け取り方でも、改正で689,062円増える計算です。
| 退職所得控除 | 課税退職所得 | 所得税 | 住民税 | |
|---|---|---|---|---|
| 2026年 iDeCo一時金1,000万円(加入20年) | 800万円 | 100万円 | 51,050円 | 100,000円 |
| 2032年 退職金2,000万円(勤続38年)新しいルール | 1,260万円 | 370万円 | 319,062円 | 370,000円 |
| 同じ退職金を、改正前の4年のルールで計算すると | 2,060万円 | 0円 | 0円 | 0円 |
例3:iDeCoが先、10年後に退職金(2026年と2036年)
2036年の退職金から見た「前年以前9年内」は2027年から2035年までで、2026年の一時金は入りません。退職金の控除は勤続42年の2,340万円をそのまま使え、退職金にかかる税金は0円、2つ合わせて151,050円です。一時金を先に受け取る場合に調整がかからないのは、一時金の翌年から数えて10年目以降に退職金を受け取るときで、このことから「10年ルール」と呼ばれています。
| 退職所得控除 | 課税退職所得 | 所得税 | 住民税 | |
|---|---|---|---|---|
| 2026年 iDeCo一時金1,000万円 | 800万円 | 100万円 | 51,050円 | 100,000円 |
| 2036年 退職金2,000万円(勤続42年) | 2,340万円 | 0円 | 0円 | 0円 |
退職金が先のとき(19年のルール)
退職金を先に受け取り、あとでiDeCoの一時金を受け取る場合は、一時金の年の前年以前19年内の退職金が調整の対象で、この期間は改正で変わっていません(国税庁 No.2732)。たとえば2026年に勤続32年の退職金2,000万円、2031年に加入20年の一時金1,000万円を受け取ると、一時金の控除は800万円から800万円を引いて0円になるため、最低額の80万円になります。一時金にかかる税金は962,842円です。
年金で受け取るとき
iDeCoを年金(分割)で受け取ると、退職所得ではなく雑所得の「公的年金等」になり、公的年金等控除を使います(国税庁 No.1600)。退職所得控除の調整とは関係がなくなる一方、国の年金と合わせた額に所得税と住民税がかかり、国民健康保険料や介護保険料の計算にも入ります。年金の額ごとの税金と保険料の目安は年金の手取り額早見表、確定申告が要るかどうかは年金受給者の確定申告で確かめられます。一時金と年金を組み合わせられるかは、加入している運営管理機関の取り扱いによります。
手続きで出す書類
退職金を受け取るときに勤務先へ出す「退職所得の受給に関する申告書」には、前に受け取った退職手当等を書く欄があります。iDeCoの一時金を受け取っていれば、受け取った年月日、金額、勤続期間(加入期間)を書くと、勤務先が控除の調整を入れて源泉徴収します。2026年1月1日以後に支払われる一時金の申告書は、支払う側が保存する期間が10年に延びました(国税庁 源泉徴収のあらまし)。書き漏れて源泉徴収が少なかったときは、確定申告で精算します。退職所得控除の計算そのものは退職所得控除の計算、手取りは退職金 計算ツールで確かめられます。
よくある質問
- 企業型DCの一時金も同じですか?
- 同じです。調整の対象は確定拠出年金法の老齢給付金として受け取る一時金で、iDeCoも企業型DCも含まれます。
- 住民税も同じ計算ですか?
- 住民税の退職所得も、令和7年度の改正で同じ9年の期間になりました(財務省 税制改正の大綱)。住民税は退職所得の10%で、ほかの所得とは分けて計算されます。
- どちらを先に受け取ればいいですか?
- 退職金の額、勤続年数、iDeCoの加入期間、受け取れる年齢で税金が変わるため、このページでは決めません。上の例の数字は、それぞれの前提で計算した一例です。
出典と前提
最終確認日 2026年10月29日。このページは、国税庁・財務省・iDeCo公式サイトの公表内容にもとづく税金の一般的な説明で、受け取り方の助言や個別の事情の判断はしません。自分の場合の書き方や控除の扱いは、年末調整なら勤務先の担当者に、確定申告なら住所地の税務署(電話相談センター)に確かめられます。
- 国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収
- 国税庁 No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき
- 国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
- 国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
- 財務省 令和7年度税制改正の大綱(令和6年12月27日 閣議決定、PDF)
- 財務省 令和7年度 税制改正の解説 所得税法等の改正(PDF)
- 国税庁 令和8年版 源泉徴収のあらまし 税制改正等の内容(PDF)
- e-Gov法令検索 所得税法(第30条 退職所得、第31条 退職手当等とみなす一時金、第75条 小規模企業共済等掛金控除)
- iDeCo公式サイト iDeCoの税制メリット(受取時の控除)
- 国税庁 電話相談センター(税についての相談窓口)