医療費控除と保険金・給付金
医療費を補填する保険金や給付金を受け取ったときは、その給付の目的になった医療費から差し引きます。給付金の方が多くても、引ききれない分をほかの医療費から差し引くことはありません。
この内容は2026年10月28日時点のものです。
最終確認日 2026年10月28日
医療費控除の額は、1年間に払った医療費から保険金などで補填される金額を引き、さらに10万円(総所得金額等が200万円未満ならその5%)を引いて計算します(国税庁 No.1120)。補填される金額の例として国税庁は、生命保険契約などで支給される入院費給付金と、健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金を挙げています。
| 費用 | 医療費控除 | 根拠 |
|---|---|---|
| 生命保険・医療保険の入院費給付金、医療保険金 | 差し引く | 所得税基本通達 |
| 高額療養費、家族療養費 | 差し引く | 所得税基本通達 |
| 出産育児一時金、家族出産育児一時金 | 差し引く | 国税庁 No.1124 |
| 医療費の補填を目的とした損害賠償金 | 差し引く | 所得税基本通達 |
| 自治体の不妊治療費助成金・医療費助成金 | 差し引く | 国税庁 質疑応答事例 |
| 傷病手当金、出産手当金 | 差し引かない | 国税庁 質疑応答事例 |
| 死亡や重度障害で受け取る保険金 | 差し引かない | 所得税基本通達 |
| 勤務先などからの見舞金(任意の互助組織の給付金を除く) | 差し引かない | 所得税基本通達 |
医療費ごとに引き、余りはほかに回さない
国税庁の質疑応答事例「支払った医療費を超える補填金」は、同じ年に入院費と歯の治療費を払い、入院費を超える入院給付金を受け取った場合に、超えた分を歯の治療費から差し引く必要はないと回答しています。差し引きは補填の対象になった医療費ごとに行い、医療費を上回った部分の補填金は、ほかの医療費の金額からは引きません。
下の表は、このルールで6つの例を計算したものです。右端は、補填をまとめて合計から引いてしまった場合の額です。補填がその医療費より多く、ほかにも医療費がある例では、この計算だと余った補填がほかの医療費まで減らしてしまい、少なくなりすぎることがわかります。
| 例 | 医療費と補填 | 補填を引いた後の医療費 | 合計からまとめて引いた場合(誤り) |
|---|---|---|---|
| 補填が医療費より少ない | 医療費30万円に補填10万円 | 200,000円 | 200,000円 |
| 補填が医療費と同じ | 医療費30万円に補填30万円 | 0円 | 0円 |
| 補填が医療費より多い | 医療費30万円に補填40万円 | 0円 | 0円 |
| 入院費より多い入院給付金と、補填のない歯の治療費(国税庁の事例の形) | 医療費30万円に補填40万円、医療費20万円に補填0円 | 200,000円 | 100,000円 |
| 2つの医療費、片方だけ一部を補填 | 医療費30万円に補填20万円、医療費20万円に補填0円 | 300,000円 | 300,000円 |
| 出産育児一時金が出産費用より多い、通院費は別 | 医療費45万円に補填50万円、医療費15万円に補填0円 | 150,000円 | 100,000円 |
金額が決まっていないとき、年をまたぐとき
申告書を出す時までに受け取る保険金の額が決まっていなければ、見込額で計算し、あとで確定額が違ったら修正申告か更正の請求で訂正します(国税庁 No.1120 のQ&A、通達73-10)。入院が年をまたぎ、1つの保険金が両方の年の入院費の補填になる場合は、原則として各年に払った入院費の額に応じて保険金をあん分します(質疑応答事例)。
保険金の受取人が医療費を払った人と違う場合でも、医療費の補填を目的とした保険金であれば、補填される金額に当たります(質疑応答事例)。
所得税基本通達73-8は、医療費の支出を給付の原因として支給されるものや、医療費の補填を目的として受け取る保険金などを補填に当たるものとしています。反対に、働けない間の収入を補う傷病手当金や出産手当金、死亡や重度障害を理由に受け取る保険金、勤務先からの見舞金は、医療費を補填する性格のものではないので差し引きません(通達73-9)。
明細書の書き方
明細書では、補填される金額を、その給付の対象になった医療費の行の「補填される金額」の欄に書き、ほかの行には書きません。給付が医療費を上回るときは、その行の医療費の額を上限として書けば、余りがほかの行に回ることはありません。
補填を引いた後の医療費で控除額が決まります。たとえば給与の年収500万円で、その年に払った医療費が60万円、補填される金額が20万円なら、控除額は300,000円、戻る額の目安は所得税と住民税を合わせて45,315円です(医療費控除の計算ツールと同じ計算、単身・給与のみ・東京都・40歳未満の社会保険料)。
よくある質問
- 保険金の方が多いと、ほかの医療費まで減ってしまいますか?
- 減りません。補填が上回った医療費は0円として扱われるだけで、ほかの病院や薬局に払った医療費はそのまま控除の計算に入ります。
- 医療保険の通院給付金も差し引きますか?
- 医療費の補填を目的として受け取る保険金なので、その通院の医療費から差し引きます。入院や手術と通院を合わせて受け取ったときは、それぞれ対象になった医療費に分けて引きます。
出典と前提
最終確認日 2026年10月28日。このページは、国税庁の説明と法令にもとづく一般的な説明で、個別の事情を判断するものではありません。自分の支出が対象になるかどうかは、住所地の税務署(電話相談センター)で確かめられます。
- 国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
- 国税庁 No.1120 Q&A(補填される保険金等が確定していない場合)
- 国税庁 所得税基本通達 法第73条関係(73-1〜73-10)
- 国税庁 質疑応答事例「支払った医療費を超える補填金」
- 国税庁 質疑応答事例「医療費を補填する保険金等の金額のあん分計算」
- 国税庁 質疑応答事例「医療費の支払者と保険金等の受領者が異なる場合」
- 国税庁 質疑応答事例「出産のために欠勤した場合に給付される出産手当金」
- 国税庁 質疑応答事例「地方公共団体が支給する少子化対策のための助成金等の所得税法上の取扱い」
- 国税庁 No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例
- e-Gov 所得税法 第73条(医療費控除)